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Ω作戦:(オペレーション・オメガ)

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写真: Ω作戦:(オペレーション・オメガ)

写真: 雨の輪舞曲 写真: 2014神嶋麗蘭暑中見舞

black widow:0009 Ω作戦:(オペレーション・オメガ) 西本浩一の自白通り、翌日の午後4時半、バンコク・スワンナプーム空港の1F到着客出口に主犯の<御影真吉>が到着した…偽造パスポートの名前は<高橋弘和>となっている。一年半のフィリピン暮らしで、すっかり日焼けした御影はアバクロのロゴ入りの白いTシャツとジーンズの半ズボン、ビーサンを突っかけたカジュアルな格好だ。顏には大きめのPOLICEのメタルフレームのサングラスを掛けている。これもレンズがグラデーションになったカジュアルなタイプである。タイにやって来た瞬間からドラゴンナイツ(黒竜騎士団)タイ駐在員たちの監視と追尾を受けている事も知らず、本人は比較的にリラックスしてる感じである。
 すでに御影をタイで暗殺する為のΩ作戦:(オペレーション・オメガ)が開始されており、御影よりも数時間早く、ブラックウイドーはバンコクに到着していた。現地ではドラゴンナイツ(黒竜騎士団)タイ駐在員たちと連携してΩ作戦を遂行する手筈になっている。標的の御影もやって来て準備は万端。こういう状態をドラゴンナイツの(作戦用暗号)では<卵は駕篭の中に入った>と表現される。そうしている内に御影は、迎えに来たタイにも進出している犯罪組織<D>の幹部連中(中国系タイ人らしい♂2人だ。東京の中国系マフィアDからの連絡によるものだろう。)と共に、タイ国内行きローカル線の乗り場の方に静かに移動して行く。タイ国際航空を利用すれば、同じスワナプーム空港からダイレクトに乗り換えが出来るのだ。それを見たドラゴンナイツの駐在員で作戦チームのメンバー“β:ベータ♀”が一般客に混じって、<チェンマイ>方向の搭乗口に進んで行く御影一行の後を追尾しながら、ウイドーと他のメンバー3人に、入手していた<御影たちのチェンマイ移動>の情報をメールで送信した。メールを受信したチームメンバー<α:アルファ♂>、<c:チャーリー♂>、そしてウイドー(コードネームではj:ジェイだ ♀)は行く先、集合場所と時間を確認すると、それぞれ他の客の間に紛れ込み、御影たちの注意を惹き付けないようにする…互いに相手を知らず、すれ違った<竜>と<虎>は御影たちが機体前方のビジネスクラス(と言ってもローカルエアのそれはチープである。通路の片側二人掛けの広めの席でようやくそれとわかる程度だ…)に着座し、ウイドー達のドラゴンナイツチームは機体中央から後方にかけてのエコノミーシートのバラバラに席を取った…バンコクからチェンマイまでの所用時間は、搭乗の際に1時間10分程度と案内されている。
 スワナプーム出発後、午後7時すぎにチェンマイ空港に到着した御影たち3人は街の中心部にある目立たないホテル(日本で言えばB級のビジネスホテルというところだ。)にチェックインした後、PM8時頃にホテルの玄関前に集合すると<ナイトプラザ>に向かって歩き出した。そこは土産物を売る色々な夜店やオープンカフェスタイルのレストランが集まるチェンマイの夜の名所である。彼らをバンコクから追尾して来たドラゴンナイツのΩ作戦チーム4人は一台のRVに乗車して、夜の街をそぞろ歩く御影一行を少し離れた場所から観察していた。RVは七日ほど前に用意されていたKIA製(韓国:起亜自動車製)でチェンマイ市内で盗難した中古車に偽造ナンバーが付けられたものだ。近くにもう一台ISUZU 製の四人乗りピックアップが待機している。こちらにもドラゴンナイツのスタッフが乗車して指令を待っている。
 御影たちは<ナイトプラザ>のメインストリートを途中まで進んだところで左折して、中ほどに広場のあるサバイディー通りに入った。
 そこを120mほど行った先にある(広場のはずれで道の左側にある)中華飯店<チュァーン>に入った。ここは客席の半分が道路端に置かれたイス席(オープンテラス席:露天の席)になっており、夜風に当たりながら食事が出来るようになっている。この店は中華料理店とは言っても、料理の味付けはタイ人の口に合わせてある。だが、唐辛子や香辛料をたっぷり使ったタイ料理とは違い、観光客にも食べやすい味で人気の店だ。
 今の時間では、ナイトプラザもメインストリート沿いの土産物店や屋台などが閉まる時間なので、この店も客は少ない。御影一行3人も露天に置かれたイス席で、道路に面した赤いガーデンチェアがセットされた4人掛けの席に腰をおろした。御影は道路に背を向けたイスに座り、連れの中国系タイ人2人は御影の右隣りと向かえ側(真正面は空けて、御影の右前方に当たるイス)に座った。テーブルの真ん中に料理の大皿が置かれても、それぞれが相手を気にかけず料理に手を伸ばせる位置であった。御影にとっては、道路側から自分の顏を見られる心配の少ない座席の位置と言える。
 その時、ブラックウイドーたちΩ(オメガ)作戦チーム4人のRVは道路の左側、中華料理店の約60mほど手前にスモールランプを点灯したまま停車していた。車内の後部座席に座ったブラックウイドーは手にした小型モノキュラー(7倍の単眼鏡だが片手に握り込めば、ほとんど目立たない)で、イスに座った御影一行を観察していた。RVの後部座席の左右には濃いめの日除けフィルムが貼られ、外側から車内は見えにくい。前の運転席にはドライバー<α:アルファ♂>と助手席<β:ベータ♀>の2人が座っている。2人ともタイではよく見かける風貌をした30代半ばの男女であり、特に人目を引く組み合わせではない。
 御影たちが先に注文したハイネッケンの瓶ビールを飲んでいる間に、15分程でオーダーした料理が大皿に載せられて、次々に出来て来た。チンゲンサイの炒め物、伊勢エビのあんかけ、フカヒレスープなどが湯気を立てたまま、眼前に並べられると、連れの中国人2人は満面の笑顔で歓声を上げた。向かえ側に座った御影の表情は見えないが、やはり見事な中華料理に思わず頬も緩んでいるようだ。
 そこを狙いすましたようにΩチームのRVは行動を開始した。まず左後部席に乗っていたブラックウイドーがRVから降りて、道路の左端を歩き始めた。今日のウイドーは肩口を露出したカジュアルなシャツブラウスにリーバイスのストレートジーンズを身に付け、愛用の黒のメッセンジャーバッグ<マンハッタン・ポーテージ>を右肩にかけている。見かけはバンコクからチェンマイにやって来たタイ人観光客の一人といった感じだ。他の旅行者と違う点があるとすれば、夜間なのに少し濃いめのグラデーションがかかった白のレイバン・ウェイファーラーのサングラスを掛けている事くらいだろう。歩み続けるウイドーが標的御影の背後10mに接近した時、左耳に装着された小型イヤーマイクからRVの後部座席、右側に座っていたチームメンバー<c:チャーリー♂>の合図が聞こえた。「こちらΩ1、発車する。」
 この時、標的、御影真吉の手前7mに来ていたウイドーは、歩きながら右肩に下げたメッセンジャーバッグの中に右手を突っ込むと、中に入れていた<コルトウッズマン・マッチターゲット>のグリップを握って、抜き撃ちの態勢をとっていた。
 前方で、御影たち3人は出された中華料理に舌鼓を打っている。左側の車道から歩いてくるウイドーとの距離は約5m。
<プァーン!>その時、ウイドーの背後から近づいたRVがクラクションを鳴らした。傍目からはRVの左側前方に飛び出して、目の前の道路を横断しようとしている男(この男性は実はドラゴンナイツのメンバー<c:チャーリー♂>であった)に対して鳴らされたものだ。ウイドーは既に、彼らの前を歩いている。出し抜けに鳴らされた警笛に、御影は反射的に左を向いた。連れの中国人2人は警笛を鳴らしたRVに目を向けたが、点けられたヘッドライトのお陰で、よく見えないようだ。
 警笛が鳴らされた瞬間、ウイドーは抜き出した<コルトウッズマン>を目にも止まらぬ速射で、こちらを向いた御影の顔面に(前額部に)3発、続けざまに撃ち込んだ。発射された22口径ロングライフル弾(この弾丸の弾頭は柔らかめのポローポイント弾で仕上げられていた。撃たれた相手の体内で変形・破裂して留まり、貫通しにくいものが選ばれている。貫通による標的以外への弾着を防止する為である。)は、御影真吉の前額部3カ所に撃ち込まれていた。近接射撃用のホローポイントは、ほぼ同時に正確に頭部を直撃した。ブラックウイドーにとっては必殺の距離である。着弾した3発の内の2発は脳幹に達し、標的を絶命させた…
 射撃の直前に鳴らされた警笛の音は、ウイドーが撃つ<コルトウッズマン>の射撃音をカモフラージュさせる為に、わざと鳴らされたものであった。発射音の小さめな22口径には十分であった。近くの店の者や通行人で気付いた人間はいない。突然の惨劇に御影の連れの中国系タイ人2人は慌てている。
 フカヒレスープが入れられた目の前の深めの大皿に頭部を突っ込んだまま、御影真吉は絶命していた。だが、今の段階では、まだ騒ぎにはなっていない。御影の右隣りに座っていた男は慌てて突っ伏したまま絶命している御影を起こしてイスに座り直させたが、すでに手遅れだ…
 鮮やかな抜き撃ちで標的を倒したブラックウイドーは、そのままの歩調で10mほど進むと道路の左側に停車していた、もう一台のISUZU 製の4人乗りピックアップの助手席に乗り込んだ。
 道路の横断を止めて、ウイドーの後ろから歩いて来たドラゴンナイツのメンバー<c:チャーリー♂>は、今の射撃で道路に落ちた空のカート3発を素早く拾い集めると、自分のジーンズの前ポケットにしまった。彼も、自分のすぐ脇に停車していたKIAのRVの後部座席に乗り込む。RVは、そこから右折して枝道になっている暗い路地に走りこんだ。
 ウイドーを乗せたピックアップも、そのまま直進して、広場を過ぎた辺りから急に暗くなるサバイディー通りの夜の闇に呑み込まれるように走り去っていった。

※すでに賢明な読者諸氏はお気付きの事と思うが、今回はドラゴンナイツに情報を提供していた内通者がいる。それは<標的>御影の協力者:犯罪組織Dの幹部たちである。このような内通者の存在無しには、この手の暗殺作戦をスピーディーかつ確実に遂行する事は困難である。

※<コルトウッズマン・マッチターゲット>について:競技用として開発された拳銃で、使用弾は威力の低い.22LR(ロングライフル弾)弾、装弾数は10+1発である。威力の低い.22LRを用いるためストレートブローバックを採用、フレームサイズは中型弾も撃発可能な頑丈なものであったため、銃身の跳ね上がりも少なく命中率は良い。銃身は6inchと構えたバランスも良い。
(Wikipediaより抜粋)メーカーはコルトだが、設計はジョン・ブローニングと言われ、そのスッキリした優美なデザインからも<なるほど!>と納得させられる。
 この銃は、ハンマーが露出していない。つまりスライドを引いて装弾したら発砲可能という事であり、意図せぬ暴発も起こりうる。取扱いに要注意の銃である。しかし撃ちやすさと反動の軽さや発砲音の小ささなどから、今回、ブラック・ウイドーが使用した屋外での近距離の精密射撃には向いていると思う。

(^0^)皆様、閲覧ありがとうございます!ついに主犯を倒したウイドー、Hit & Awayの原則に従えば、後は素早い国外脱出だ! <以下、次回に続きます。>

<DIGITAL GRAPHIC ART 秘宝館>御来場有り難う御座います。写真一覧から他の作品もご覧下さいませ。

 ※本作に登場する<人名>を始め、施設名などは創作上の当て字であり、実際の人物・団体とは関係ありません。すべてフィクションです。

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