At the twilight zone 0026

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＜水の邪霊：曳舟の章0003＞

　…あれから、十日あまりが過ぎていた。今は午前5時半。季節が秋に入ったためか、それとも泉に沈む魔性の妖気のせいか、前回は美しい朝焼けの照り返しで爽やかな佇まいを見せていた＜神泉＞の岸辺も、今朝は禍々しい血の色とでも云うような暗い紅色に染まっている、そして今はまだ朝日が差していない泉水も青みがかった暗紫色に覆われている。爽やかな朝というのには程遠い不気味さだ。

その＜神泉＞のほとりに神嶋麗蘭は佇んでいた。今日の麗蘭は巫女姿の両袖をタスキ掛けして肘まで袖まくりにしている。左腰には前回、邪霊＜曳舟＞に折られた愛刀＜斬妖剣＞に替わって神社庁から借り出した神剣＜御霊丸＞が、そして右側の小脇に一振りの古い和弓を抱えていた。この弓は作られてから、かれこれ七、八十年は経っている古い弓で、上方の名工〈十一代・福山甚右衛門〉の作といわれる神宮所蔵の逸品だ。　　
　
　普段はもっぱら宝物庫の奥深く仕舞われているものだが、先日の麗蘭が水の邪霊“曳舟”の調伏に失敗し斬妖剣まで叩き折られた事態を重く見た神社庁幹部・立原大宮司（たちはらだいぐうじ）から、秘蔵の名弓〈十一代・福山甚右衛門〉を神嶋麗蘭に与えて強敵＜曳舟＞を調伏せよとの直命が下されたのだ。

　麗蘭の足元に、泉水の水面から立ちのぼる薄気味の悪い朝靄が、まとわりつくように立ち込めて来た。神嶋麗蘭は静かな眼差しを＜曳舟＞の霊体となっている朽ち果てた小舟が沈んでいる泉の中ほどに向けた…

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コメント (2)

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  Yasuo Nakayama
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  2012年10月3日 02:19 Yasuo Nakayama (0)

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  麗蘭さん巫女さん姿とても綺麗です。袴の下が鮮やかな紅色で、凄い内なる力を秘めていそうな印象です。悪い敵と対峙するように見せる、影のシルエットのような物を少し入れると、ファンタジー的な物語の怖い雰囲気が出るかも？(^O^)

  2012年10月3日 12:02 osamurasaki (0)

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