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black widow0004:追尾する女豹

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写真: black widow0004:追尾する女豹

写真: Goodbye Dayを聞きながら♪ 写真: blackwidow0003:闇の中の魔女神

<新フォトドラマ>ブラックウイドー:追尾する女豹

  black widow 0004:場所は先ほどの南麻布のライブハウス<ミネルヴァ>前の道路。時間は午前二時半…ビルに面した道路側、約300mほど先の黄緑色がかった街路灯の脇に、ミッドナイトブルーメタリックに塗装されたメルセデスベンツ350CLSが停車していた。その薄暗いドライバーズシートに腰をおろし、艶やかな長い黒髪をヘッドレストに持たせかけたまま、ルームミラーに映る後部の景色を見つめている女がいた。ブラックウイドーであった。ライブハウス<ミネルヴァ>が閉店してから、一時間と少し。このタイミングに合わせて、ウイドーはやって来た。ミネルヴァの地上正面玄関から迎えの車に乗り込む標的の一人<西本浩一(こういち)>を待っているのだ。
 そのわずかな時間待ちの間に、ウイドーは今回の事件の経緯を回想していた…

 今から三ヶ月前のその夜、深夜0時すぎ、西麻布の会員制高級カラオケ店<STAR WARS>の奥にあるスペシャルルームの1つで事件は起こった。その部屋には、店の常連である建設会社のオーナー、加藤 勝<38>が取り巻きの幹部社員3名と馴染みの六本木のキャバクラ嬢の2人を連れて入室していた。彼らは既に数軒の店を回ってから、この店に落ち着いたらしい。かなり回ったアルコールのせいも手伝って、普段から横暴な性格の加藤は、かなりハメを外していた。右手に持った大きなワイングラスにロックアイスをぎっしり詰め込み、たっぷりと注がれたヘネシーX・Oをガブ飲みしながら、左隣に座らせたキャバクラ嬢を強引に抱き寄せて、ドレスの大きく開いた胸元に無理矢理、左手を突っ込んでいる。反対側の右隣に座らされたキャバクラ嬢は、自分のそろえた両膝の上に乗せた加藤の足をマッサージさせられている。
 残りの男性社員は、ヘネシーのボトルを捧げ持ち、加藤のお酌をさせられている幹部Aや、酔っぱらって悪態を吐き続ける加藤にひたすらお追従している営業部長Bだ。卑屈な二人の態度が見苦しい。しかし、三人目の社員Cは前記の2人とは明らかに異なっていた。乱痴気騒ぎに埋没している5人には目をくれず、隙の無い視線を出入り口のドアに配っている。見るからに体育会系といった感じのこの男だけはアルコールを口にしてはいないようだ。目の前のテーブルに置かれたグラスの中味は氷の溶けかかったウーロン茶だ。この社員の本来の役目はボディガードらしい。

 彼らが入店して、ほぼ一時間が過ぎた…この時間ともなると<STAR WARS>もかなり客は少なくなっていた。通路に面した入り口のネオンも消えた店内に、その一団はいきなり乱入して来た。黒のスーツにノーネクタイ姿の男達は全部で7人。「お客様、本日はすでに閉店させていただきましたが…」行く手を遮った茶髪で長身の店員の腹部を、一番先頭の小柄な目付きの鋭い男は返事もせずに前蹴りで思い切り蹴り上げた。彼らの常軌を逸した凶暴さに、フロントで精算していた他の客も思わず凍り付いた。男達の乱暴さに驚いて悲鳴を上げようとした女性客の一人は、他の黒スーツに腕を掴まれ首筋に手刀を喰らって昏倒した。その客達を冷たい嗤いを含んだ目で見回した先頭の小柄な男の名前は御影真吉(みかげしんきち)<34>と言った。店に侵入してきた半グレ集団「新東京連合」のリーダーだ。

 元暴走族上がりの御影と、今はここにいないが、もう一人のサブリーダー、西本浩一が結成した「新東京連合」はこのところ新暴対法に縛られ表面的な活動を抑制されている暴力団に代わり、夜の赤坂、六本木、麻布などで幅をきかせている。

 奥の個室に続いている細い通路から一人の若い男がフロントに向かって出て来た。ラフなシャツジャケット姿の男は御影に目配せしてから、右手で自分が出て来た方向を指差し、続けて指を二本立てて、御影の目指す相手がルームナンバー2番の個室にいると知らせて来た。「おい、行くぞ。」後ろに続く黒スーツの配下に低く合図した御影は、フロア奥の個室に向かって足を踏み出した。その御影の後に続いたのは二人、残る四人はフロアにとどまった。見れば、それぞれが伸縮式の警棒やスタンガンを手にしている。こちらはフロントの客と店のスタッフを威圧して黙らせるのが仕事のようだ。

 ナンバー2の表示があるドアの前に来た御影はスーツの上着をハグって、ベルトに差していた凶器を引き抜くと、右足で個室の入り口のドアを思い切り蹴飛ばして開けた。「ドス!」と重い音が響き、ドアは内側に勢い良く開いた。右手に銃を構えた御影の前に、立ち塞がったのは加藤が連れて来ていたボディガードCであった。咄嗟に両腕をボクシングスタイルに構えたCは次の瞬間、御影の右手の銃を見て、パンチを繰り出そうとした動きを止めた。その顔面に御影の左の拳が思い切り食い込んだ!「バカ野郎。邪魔するとぶち殺すぞ。」殴り倒されたCは仰向けに倒れて昏倒した。そのわずかな間隙を利用して室内に入った配下の二人は、加藤やキャバクラ嬢、他の社員にサバイバルナイフやスタンガンをつきつけて黙らせた。暗めに落とされていた室内の照明は明るくされている。それまでベロベロに深酔いしていた加藤も、この非常事態には驚きの方が勝ったらしい。酒のグラスを右手に持ったまま、だらしなく泡を吹いているばかりだ。その加藤の鼻先に右手の自動拳銃を突きつけると、御影は低い声のまま訊いた。「てめえが加藤だな?」 「何の用だ。」血の気の引いた顏で聞き返す加藤の質問には応えず御影は言った。
「オレは新東京連合の御影だ。これで用件はわかっただろ。」「みかげ…!待て!まずオレの話を聞いてくれ!」

 <バンッ!>次の瞬間、御影の手にした自動拳銃が火を吹いた。喉仏を押さえてのけぞった加藤はイスに座ったまま、大きな音を立ててひっくり返った。弾は加藤の喉仏から入り、斜め上に延髄を突き抜けたようだ。即死だった。少し暗めの個室内でも、押さえられたままの加藤の左手指の間から赤黒い血が溢れ出てくるのが見えた。入り口のドアを蹴り開けて侵入してから数分、落ち着いた動作で人一人を射殺した御影は、配下の二人に目で合図を送ると、そのまま踵を返して、その場を立ち去ろうとした。「キチガイ…」その時、誰かの呟いた、その小さな一言が死神の足を止めた。個室を出た右足が、そのまま回れ右をして後ろを向いた。自分をなじった相手の瞳を真っ直ぐに見つめ返して、御影は低く囁くような声で言った。「今、オレをキチガイと言ったのは、お前か?」御影に射すくめられたまま、震えているのは加藤が同伴して来たキャバクラ嬢の一人、桜子という娘だった。「…だって、いきなり撃つなんて…」御影は言った。「だから何だ?」 「お前の目付きが気に入らねえ…」
 
 <バンッ!>発射された二発目の弾丸は桜子という娘の左目を貫き、左後頭部に開いた射出孔から血と脳漿を吹き出させた。この娘も即死であった。その娘の死に様を見て、少し興奮したように御影は呟いた。「こいつも即死か。すげえな、この銃。」「さすがはトカレフ…軍用だけの事はあるぜ。」


 その十五分後、その個室から出て来たのは御影と配下の男、二人だけだった。加藤を始めとする個室にいた客は全員殺されていた。しかし、カラオケ店<STAR WARS>にいた店員と残りの客たちの中に一人も殺害現場を目撃した者はいなかった。彼らは、御影と共に侵入した<新東京連合>の男達に脅されて全員が黒のガムテープで目隠しされた。そして御影らが個室に乱入した直後に別の広い個室、二部屋に分けられて押し込められていた…

<以下、次回に続きます。>

(^0^)皆様、閲覧ありがとうございます!今回のミッションの詳細は、この後、徐々にw  情弱大国日本の闇で行われる許せぬ不法取引にウイドーが黒い鉄槌を下します。お楽しみにw

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