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黒い天使:scorpio 真の最終章 Last: the face of darkness

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写真: 黒い天使:scorpio 真の最終章 Last:  the face of darkness

写真: an evening scene of one day. 写真: 黒い天使scorpio : 真の最終章 #6〈クリーンアップ 〓 掃討 〉

19世紀に建てられたという古いホテルの窓からAyakaは、ぼんやりと外を眺めていた。あの観音崎、ベイツ荘での激闘から6ヶ月が過ぎていた。

  今は5月、場所はパリ市内のサンジェルマン地区にある古いホテルにAyakaは滞在していた。あの決闘の後、一度カナダに戻ったAyakaは、HILDAとペトロフのiPhoneから取り出して来た2種類のSIMカードから電話帳や通話履歴、メールやメモなどを割り出す為、闇で情報解析を専門に請け負っている組織に依頼し た。2種類のSIMカードの解析料金は日本円で1800万円だ。法外な金額だが、これには口止め料も含まれている。Ayakaは今までに数回ここを利用しているが、信用出来る業者だ。


 結論からいうと2人のSIMカードからは電話帳、通話履歴、メールの全てが消されており、ここから彼らの素性や人脈をたどる事は出来なかった。HILDA、ペトロフ、2人とも、さすがにプロだ、用心深い。しかし、HILDAのSIMカードからリヒテンシュタインとバヌアツの銀行口座の情報が割れた。そこに預金されていた合計12億円のキャッシュの75%がAyakaの手に入った。情報解析屋に手数料として 25%を取られた残りだが、預金の移動の際にこの業者の用意しているケイマン諸島の別名儀の口座、パナマの口座など数カ所を移動させたおかげで、後々のトラブルは避けられる。さらにHILDAについては何もわからなかった。その氏名も住所も全く関係のない赤の他人のものだった。闇の情報屋が手を尽くしても、本当の年齢はおろか国籍さえも判明しなかった…

 
  AyakaがSIMカードから抜き出したかった情報は、HILDAに炭疽菌の入手を依頼した日本政府の“あるセクション”のものであった。



 Ayaka の家族を惨殺し、父親の貿易会社を乗っ取った<真の目的>は、HILDAの部屋を通して日本国内の犯罪組織を掌握し利用する為だったと今は思っている。(彼らの必要な武器を調達してやり犯行のサポートをする。貸し出した銃は一度使用し終わった直後に回収して銃身を交換。別の銃として再生する。もちろん、外した銃身は廃棄する。日本の警察は、犯罪に一度使用された弾頭の線条痕をデータとして保存している。だから同じ銃を発砲し、弾頭を被害者の身体や現場に残せば、警察に採取照合される。警察は保存している銃の線条痕のデータと、その時に採集した弾頭の線条痕を照合して捜査する。だから発砲した銃の銃身を取り替え、別の銃身を取り付けてしまえば、データ上は新しい銃になる。これで警察の捜査を攪乱出来る訳だ。(銃の製造番号などは当然、削り取っている。)

 このシステムを利用したい犯罪者は当然多い。高い会費を払っても惜しくないメリットがあるからだ。彼ら利用者をメンバーとして登録し高額の会費を払わせる。もちろんHILDAの部屋には、そこから莫大な利益が舞い込む。よくもこんな上手い仕組みを思いついたものだ。(それが成立する為には最高の殺しのテクニックとガンスミスとして最高の腕を持つHILDAの存在は欠かせないわけだが… )

 その仕組みをスムーズに稼働させる為には銃器、弾薬、部品などの密輸が必要になる。そこで実績のある民間貿易会社を乗っ取り、そこを隠れ蓑にして非合法な物品、武器を輸入させる必要があったのだ。さらに法律で禁止されている日本製の武器、物品や電子部品・技術を逆に輸出する。

 この計画には暴力組織の幹部、殺し屋だけでなく東京都会議員、新宿南警察署長まで加担していた。

 だが、とAyakaは思った。生前のHILDAの話によれば、無差別テロに使用する<炭疽菌>まで扱おうとしていた…しかも、それを日本国内で正体不明のテロリストの犯罪と決めつけ、マスコミを誘導して <日本憲法改正→自衛隊を日本軍に昇格 →核武装化実現>という計画だという。HILDA達は今までの<メンバーへの闇の銃器提供>を打ち切り(最近の暴対法の厳格化で時代の風潮が変わり商売替えの必要に迫られたらしいが)この新しい悪魔のプロジェクトに鞍替えしようとしていた。そこで、今までの事情を知っている組織の中心人物6人が邪魔になって来たようだ。(彼らの中には生物化学兵器の取扱に二の足を踏む者もいたようだ。)
  これが全てHILDAの作り話とは思えない。とすれば<炭疽菌>の買い手として日本政府のどこかのセクションが関係しているはずだ。カナダに戻った後、Ayakaは最初はこのセクションの中心人物をあぶり出せれば計画を阻止出来ると考えた。しかし、HILDAやペトロフの携帯からは相手を特定出来る情報は掴めない…これだけ用心深い相手だ。この相手は、おそらくAyakaが一昨年、HILDAの部屋に加入して来た段階で、既に<炭疽菌テロ>を利用して<日本再軍備化>と<日本核武装>を企図していたものであろう。そこで、たまたまやって来たAyakaをヒットマンにして、仇討ちを支援する方法で、今後の計画に不要になって来た6人(暴力組織の幹部のNOGAMI,TAKEZAKI,HUKUI親子,強欲な都議MAJIMA,秘密を知りすぎた貿易会社の社長FURUKAWA)を処分させたという訳だ。 (新宿南警察署長HONDAを射殺され、警官隊の包囲網をAyakaが突破、逃亡した事は計算違いだったようだが)そう考えれば、HILDAがあれほど Ayakaに肩入れし(もちろん有料だが)戦闘訓練を施し、必要な武器をすべて供給したり、仇敵達の所在や周辺情報を細かく教えた訳も納得出来る。

 「私はすべて、奴らの手の中で踊らされていたという訳か!…」

  Ayakaの中に熱い怒りが湧き出して来た。その瞳には心の中とは逆の冷たい青い炎が燃え始めた。「奴らは自分達の目的達成の為には罪の無い市民の命なぞ石ころ程度にしか考えていない。今回の<炭疽菌テロ>の陰謀は叩き潰したけれど、きっと他の計画を考えてるに違いない。狂人どもめ、人の命をなんだと 思ってるんだ…」

 パリ市内のホテルの窓から夕暮れの街の景色を眺めるAyakaの瞳に暗い炎が燃え上がっている。その心は深い哀しみの色に覆われていた…

 しかし、まだ姿の見えないこの巨大な敵に刃向かう事は、今度こそ100%自分の生命を投げ出す事になると覚悟しなければならない。

  失った家族の仇敵七人への復讐を果たし最後の宿敵<HILDA>を倒した後、人生の目的、生きる意味を失っていた7ヶ月であった。だが巨大な敵は HILDAの背後にいた。しかし、相手の正体は不明である上に、その存在はあまりにも巨大だ…

 眼前に立ち塞がる黒く大きく天までそそり立つ壁の前で、Ayakaは黒い壁を見上げたまま立ち尽くしていた。 (完)

◎この物語は完全なフィクションであり、登場する人物、団体はすべて架空のものであり、特定のモデルは実在していません。

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