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At the twilightzone 0024

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写真: At the twilightzone 0024

写真: At the twilightzone 0025 写真: Thaiの水上マーケット0003

水の邪霊 <曳き舟> 
 
 妖怪・邪霊にも季節というか出時(でどき)があるらしい。雪がらみの妖怪は冬場に出没する(まあ、考えてみれば当然だが)という事である。
 数日前から、ここ神宮の森にも夏場特有の邪霊が出没し出した。
神宮の森の奥深く‥‥一般参詣者が立ち入り禁止の場所に、古来より〈神泉〉と呼ばれるかなり大きめの泉がある。神宮で執り行われる神事に使用される〈水〉のほとんど、また神官、巫女が身を清めるのにも使用される貴重な泉である。
 まだ薄暗い早朝、神嶋麗蘭はこの泉水に半身を浸していた。晩夏とは言え、明け方であり水温は低い。その右手には愛刀〈斬妖剣〉が構えられている。今日の麗蘭は愛刀を水面に対して水平に構えていた。これは神嶋家に伝わる秘太刀〈新陰流 波斬り〉の構えだ。麗蘭が暁の泉水に身を浸して太刀を構えるのには理由がある。
 それは最近ここに現れる水の邪霊<曳き舟>を調伏する為であった。
<曳き舟>又の名を<舟曳き童(ふなひきわらべ)>とも言われる。この邪霊は元々は神宮開闢の折りに神泉から水を汲むのに使用されていた一艘の小舟だったと言われている。それが廃船となった後、泉の真ん中に放置され 漂っていたものがいつの間にか沈んでいた‥‥沈んでから十数年が過ぎ、いつしか、その事は忘れられてしまった。その小舟の霊が突然に祟り始めた。最初の事件が起こったのが今から2週間ほど前の事であった。その日の早朝、日中の神事を控えた一人の若い神官が泉の水を汲む為に、ここを訪れた。神官は岸辺に留められた小型のボートに乗って泉の中程まで漕ぎ出した。まだ水面に陽は差しておらず、空は美しい朝焼けに彩られていたと言う。神官はボートから身を乗り出し、手にした手桶に泉の水を汲み取ろうとした。その時、異変は起こった!水面から現れた青白い子供の手が、神官の襟首をつかむと、あっと言う間に水中に引きずりこんでしまった。あとに残されたのは赤と白に塗り分けられた小型ボートだけであった‥‥これはタダの転落事故と認識された。その後、2週間のあいだに、さらに2人の犠牲者が出た。そうなって、これは水の邪霊の仕業であると判明。神社庁より指命を受けた神嶋麗蘭が調伏の任に就いたのだ。

 斬妖剣を構えた麗蘭は油断なく泉水の中ほどに進んで行く。元々、この泉水の深さは麗蘭の胸の辺りが最深部である。15℃の冷たさに麗蘭の身体が慣れて来たようだ。足取りはスムーズになっている。その時、いきなり麗蘭の背後の岸辺で「リン。」と小さいが、よく響く鈴の音がした。
(続く…)

<続く>
<御注意!>本作は完全なフィクションであり<神嶋麗蘭>は想像上のヒロインです!

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コメント (1)

  • Yasuo Nakayama

    Yasuo Nakayama
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    2012年8月27日 19:47 Yasuo Nakayama (0)

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